―夏特有の太陽の光りが新選組の頓所を照らしていた。


 今年の夏は例年よりも暑く、京の町では暑さで倒れる町人が多く、医療所が対処をするのにてんてこ舞いだった。
 頓所内でも暑さに当てられて倒れる隊士が続出した。それを見兼ねた局長の近藤 勇が

「日々の鍛練と見廻りを怠る事は出来ぬが、このまま隊士全員が倒れられても困る。ので、鍛練の時間を少し減らし、見廻りを増やそうと思う」

 どうだろうか?と、副長二人に提案してきた。

「鍛練の時間を減らすのはいいですが、見廻りを増やすと言うのは?」

 周りが暑い、暑いと騒いでいる中、仏の副長こと山南 敬助は着物を着崩さずに着ていた。勿論袴も履いている。

 暑苦しい格好をしやがって。山南の隣にどかりと座っているのは鬼の副長こと土方 歳三である。
 土方の格好は、前はだらしなく開け、袴は暑いからと履かずに着流しと言った格好である。山南とは正反対であった。

「頓所内で篭っているよりは市中見廻りのほうがいいかと思ってな。いつもと時間は変わらないが、気持ち的には変わるんじゃないか?」

 どうだろうか?と、聞いてくる。土方は黙ったまま何も言わない、山南は腕組をしたまま黙っている。
 近藤にしてみれば、この短い時間も長く感じた。二人の副長が黙りこくっているのは、反対しているか互いの意見を探っているのかのどっちかである。
 あまりにも冷や汗ものでもある。そんな近藤を尻目に、先に口を開いたのは土方であった。

「いんじゃねぇのか?巡視の時間が長くなるし、実戦の方が早く身につくだろ」

 どうだい?山南先生と、山南にふった。

「えぇ、土方君の考えに私も賛成ですよ」

 いつものように顔に涼しい笑みを貼付けていた。本人はいたって普通なんだろう。
 土方はそんな山南の顔が好きじゃなかった。何もかもその笑みの裏に隠し、一切の自分の弱みを、自分の考えを見せようとはしないからだ。
 むろん、局長にも土方にもだ。土方はそこん所が気に食わなかった。

「そうかそうか!!やっぱりそう思ってくれると思っていたよ!!では、早速この内容を紙に認めねば!!山南さん、手伝ってくれるかい?」

 先程から沈んでいたのが嘘のように一瞬で近藤の表情は笑顔になった。余程嬉しいらしい。

「私でよければ」

 そう言い、山南は腰を上げた。隣に座っている土方は煙管に火を付けていた。


「山南さんがいれば大変助かりますよ」


 それじゃな、歳と近藤が、失礼しますと山南が言い、部屋から出て行った。
 土方は一人、口から吐く煙を見つめ、一つ、溜息をした。




 近藤が考えた案は、最初の頃は不評だったが、二日三日と過ぎていくと隊士の間での評価は上々となっていた。
暑さで倒れる隊士もいなくなり、頓所内の雰囲気も良くなっていた。そんなある日の出来事である。





Don't be so bullheaded.-1