Σ(゚Å゚)


 障子の開いた隙間から光がさしてきた。
 どうやら朝を告げる太陽が昇って来たらしい。そんな眩しい光が斎藤 一の顔へと容赦なく当たる。
 最初の頃は寝返りをうったりして眩しい光から逃れようとしたが、何やら斎藤の左隣に何かがあって、寝返りがスムーズにうてない。
 仕方なくああだこうだと試行錯誤をして光を遮ろうとしたが、どれも満足に遮れなかったので斎藤は仕方なく起きる事にした。

「…」

 眠たい目を擦りながらふと、左側を見て見ると

「…!?!?」

 そこには、伊東先生こと伊東 甲子太郎が安らかな寝顔で寝ていた。


 バクンバクン。


 今の斎藤の鼓動音はこんな感じだろうか?
 あまりにも突然で、あまりにも生々しい事を頭の中で想像した自分に渇を入れながら、新年早々になぜこんな事になっているのかを頭の中で考え始めた。

 昨日きのう…。

 はて、昨日は新年だからと近藤局長方と飲んでいた。けど、静かに飲みたくなったから部屋を辞した。
 出る時に山南さんに声を掛けられたのを覚えている。そういや、仲が悪いと言われてるのに隣に座って酌してたな…やっぱりあの二人は仲が良いらしい。
 部屋を辞した後は、自室の前の縁側に座って月見酒をしてたな…月が綺麗に見えたから。で、そこに伊東先生が来て……!!!!

 斎藤の顔がみるみる赤くなり、耳まで真っ赤。目は充血しそうな勢いだ。

「うぅん…」
 
伊東が隣で身動いた。斎藤がビクリと体を強張らせる。

「…さぃ…とぅ……くん?」

 ズキューン!!と、斎藤の心が撃ち抜かれた。

 そ、そんな小声で小さい子が呼んだみたいな「さいとうくん?」はやめて下さい!!!あぁ!そんな首傾げないで!!って!!何で腰に手を巻き付けてくるんですか!?

 斎藤はパニクッていた。
 伊東が隣に寝ていた事で十分パニクッていたが、伊東の首傾げの小声攻撃で大打撃を受け、挙げ句の果てには抱き付かれるとは予想もしていなかったので、斎藤は十二分パニクッていた。

「い、伊東先生?」

 抱き付かれたのはいいが(いいのかよ)、抱き付いてきた伊東が動かない。はて、どうしたかと顔を覗いて見ると

「…すぅ…すぅ」

 心地良さそうに寝息をたてながら寝始めた。

「…」

 そんな伊東の寝顔を見る斎藤。何やら表情が悪戯小僧の顔になっている。

「…伊東先生…伊東先生」

 耳にわざと吐息がかかるように話し掛ける。伊東はそれにピクリと反応を返しながらうっすら目を開ける。
 伊東が斎藤の腰に手を回しているので、伊東は斎藤の顔を見上げる形になる。斎藤は見下ろす形だ。

「…さぃ…とうくん」

 伊東に名前を呼ばれて何ですか?と、答える斎藤。片手は伊東の顔に添えている。

「…おはようございます」

 にっこり。

 この行動に流石の斎藤でもズルリと転けた。言った本人はまだ寝ぼけままなのか、ニコニコ笑顔のまま動かない。

「いとうせんせい」

 斎藤がゆっくりと呼び掛ける。伊東はそれに何ですか?と、寝ぼけた頭で返事をする。

「…」

 ニヤリ。

 斎藤が口元が笑う。伊東は頭に?を浮かべたままだ。

「何で…!?」

 何ですか?と、言おうとした瞬間。伊東の口は斎藤の口で塞がれていた。

「うぅ…ん!!」

 突き放そうにもいつの間にか斎藤が腰に手を回してガッチリと掴んでいるので逃げれない。それに、寝そべったまま斎藤の腰に抱き付く形だったので、力を入れたくても力が入らない体勢だった。微力ながらも抵抗をしていたが、やはり無理で、抗えないまま斎藤の膝の上へと座らせられる形になってしまった。簡単に言うと、お姫様抱っこの座ったバージョンだと思ってくれればいい。

「…何をするんですか?」

 流石の伊東も目が覚めたらしい。この後何をするかと思うと、ちょっと身構える。
 声のトーンがいつもより低めだ。

「伊東先生なら知ってますよね?」

「ひめはじめ」

 かぁー、と顔が赤くなる。率直な反応をしてくれるのがまた良い。

「姫初めって!!こんな朝から!こんな場所で?!」

 見ての通り、焦っている。
 こんな朝っぱらからで近藤局長方が来たりしたら終わりだ。しかも、ここは斎藤君の部屋、朝起きて私が部屋に居ないと思うと探しに来る部屋はここが最有力候補だ。内海に知られるのは別にいいが、見られるのは嫌だった。

「伊東先生」

 何やら改まった表情で伊東を見る斎藤。

「な、何ですか?」


「ここじゃなくて、朝じゃなきゃいいんですか?」


 バシィーン!!

 と、朝から新撰組の屯所に響いたのは言うまでもない。





ひめはじめ。