「おはよう、ロード」

「おはよう、リナリー。今日もドレス選んであげるよ♪」

「本当?ロードの選んでくれるドレス大好き」

「リナリーは可愛いから、何でも似合うよ」  

 長い廊下を二人並んで歩く様は、姉妹のように見える。

「いつもリナリーの服を選んでもらってありがとう、ロード」  

 二人に声を掛けたのは、黒のロングのチャイナ服を着た長身の男だった。

「兄さん!おはよう」  

 コムイを確認すると、抱き付くリナリー。

「おはよう、リナリー、ロード」

「おはよう。コムイも、綺麗だから、ドレス似合うと思うよ♪今度、一緒に選んであげるから計らせてよ」

「え…ぼ、僕はいいよ!男だし!!」  

 ロードの急な提案に冷や汗を流す。ロードは、言った事は大抵実行するのだ。本人の承諾なしに。

「そんな事ないよ。化粧をして、ちょっと詰め物したら、完璧だよ♪」

「私も、“姉さん”と一緒に歩きたい♪」

「り、リナリー!!」  

 可愛い可愛い妹にそんな事を言われると、断れなくなってしまうコムイ。

「何、なにしてんの?」

「あ、ティッキー♪」  

 正装姿のティキ・ミックが面白いものでも見つけたような様子で近づいて着た。

「おはよう、ティッキー」

「おはよう、リナ嬢にコムイ。うんで、なにしてんの?」

「助けてくれよ!!ティキぽん!!」  

 挨拶もそこそこに、ティキに助けを請うコムイ。

「そのティキぽんはやめろって。だから、事情を知らない俺に分かるように説明してくれ!」  

 ティキの後ろへと隠れるコムイ。身長は、似たり寄ったりで、長身の俺が長身の俺の背中に隠れるのは、何とも微妙である。

「二人がいじめるんだ!」

「はぁ…」

「違うよ、提案してたんだよ。コムイに似合うドレスを探すからサイズ計らせてって」

「そう♪」  

 女の子二人が満面のスマイルでティキへと説明する。

「ドレス?…」  

 ティキが、後ろにいるコムイへと振り向く。

「助けてよ〜ティキぽん」  

 眼鏡越しに見るダークブルーの瞳、透き通るような白い肌、髪はセミロングで毛先がくせっ毛で外側に跳ねているが、そこはヘアメイクでどうにかなる。いっそのこと、付け髪でもすればいい。撫で肩で平均よりも細いウエストは触っただけでも壊れてしまうんではないかと思う。上から下までをざっと見てのティキの結論は…

「っな!?」  

 コムイの後ろに回り込み、両脇に腕を通してがっしりと固定すると…

「今だ!計れ!!」

「ティッキ!!!!」  

 コムイが悲痛の叫びをあげる中、ロードが満面の笑みで巻き尺を持ってコムイのサイズを計った。




「酷い…」

「ごめんって、兄さん」

「すまん、コムイ」  

 項垂れるように歩くコムイの後ろには、すまなさそうに謝るリナリーとティキがいた。

「二人供、楽しそうにさ…」

「本当、ごめんなさい!」  

 リナリーが90度に頭を下げる。こんなに謝るのは、兄だけである。

「少しでも見たいと思った俺も悪かった」

「そんなに謝ってくれなくてもいいさ…ロードには、もう計られたんだし…はぁー」  

 にこやかに笑い、嬉しそうに楽しそうに“二人分”のドレスを選びに行ったロード。彼女を止める事はもはや出来まい。

「僕、これから千年公と会議だってのに…」

「私達もよ?」

「定例が終わった後。今日も缶詰めかな?」

「伯爵様ばっか兄さんを独占するのズルいわ!」

「リナリー、僕は君と違って運動音痴なんだから…」  

 可愛い妹がぷぅと、頬を膨らませる姿は可愛い。可愛いが、コムイは戦闘員と言うよりは、参謀である。前線に出ても役に立たない。そう思っている。

「大丈夫、兄さんは私が守るわ」

「そう言っても」

「可愛いボディーガードじゃないか、コムイ。リナ嬢の足技は強烈だぜ、千年公のゴーレム付きだしな」  

 コムイの肩を叩くティキ。

「そうだけど…」

「それに、千年公があんたに渡したあのステッキだって、そうとう怖いもんだぜ?」

「あれは、千年公が外出する時に持つよう言われたもので…」

「その通り」

「!!、千年公」  

 前方から見慣れたシルエットが現れる。

「皆さん、来るのが遅いですよ。ロードはどうしました?」

「ドレスを選びにちょっと抜けてます」

「時間厳守だと言っているのですがね…、それと、コムイ、貴方にあげたステッキですが、あれはステッキの形をしていますが、ティキぽんのティーズと同じゴーレムです。ティーズは肉食ですが、貴方のは草食ですよ。血を吸うだけですから」

「そっちの方がたち悪くないですか?」  

 人肉を食らうティーズが肉食で、自分のゴーレムが血吸うだけで草食という表現はどうかと思うと思いながら、跡形もなく死体を消されるのと、血だけ抜かれた死体とでは、違うものがある。見た目的には、後者の方が嫌だ。まぁ、どっちも嫌なのは言うまでもない。

「まぁ、それはいいです。会議を始めるから、皆さん急いでください」

「はーい」




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