「あれはいつの話だったかな?」

 ホームズは暖炉の前にお気に入りの椅子を移動させて一人思考に耽っていると、いきなり声を上げた。

「何の話だい?」

「あぁ・・・いいや、なんでもない・・・そうか、そうか・・・」

 そう言ってまた一人思考に耽り始めた。
 ロンドンにも雪は降り始めた。まだそんなに積もってはいないが、日が当たらないところにはひっそりと積もっているといった感じだ。

「・・・」

 私はこれと言ったことをしていないが、時間がある時にはホームズが今まで解決してきた事件を自分なりの文書にして書いている。

「ワトスン!今から散歩でもどうだい?」

 ホームズが椅子からスッと立ち上がったと思ったら今度はコート賭けに賭けてある上着を着、ハットに手をかける。

「いきなりだな・・・いいよ。私も気分転換したかったしね」

「決まりだ。さ、行こう!」

「おい!ちょっと待てくれよ!!」

 私は開いていたノートを閉じて急いで上着とハットを取ってホームズの後を追った。

「今日はどこまで行くんだい?」

「そうだね・・・」


 そんな会話が今日もベイカー街から聞こえてくる。




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