五月五日。

 言わずと知れた「こどもの日」。
 こどもの日とは、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことを趣旨としている。
 1948年公布、施行の祝日法によって制定された。
 江戸時代、明治時代には存在しない祝日である。
 そんなこどもの日に生まれた一人の男がいた。

 土方 歳三。

 その人である。




「土方さぁ〜ん♪」

 沖田 総司がニヤニヤしながら土方の後ろをくっついてきた。

「・・・。」

 うるさくてたまらない。

「歳三さぁ〜ん♪」

 ・ ・ ・。

 ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ(以下略

「総司」

「何ですか?」

「何が目的だ?」

「別に、これといった目的は・・・まぁーあるといったらありますけど、まだ皆刀さんが来てないからやりません」

 ・ ・ ・。
 皆刀と何をやろうってんだ・・。

 皆刀と言うのは、最近まで土方の小姓をしてた青年で、現在は三番隊に配属されている。

「なぁ総司」

「何ですか?」

 いつものと変わらないへらへらした顔、たまにはシャッキとした顔つきもできないもんか・・・そう思う土方である。

「てめぇは一番隊の組長だよなぁ?」

 青筋で出てきそうである。

「はい、そうですけど」

 先ほどとかわりない表情。
 土方が怒っているのは十二分にわかっている、わかってるから性質が悪い。

「なら、とっととてめぇーの仕事をやってこい!!!!!」

 いつものように土方の怒号が飛んだのは言うまでもない。

「沖田先生、いらっしゃいますか?」

 規則ただしく障子の向こうから声をかけてくるのは皆刀 薙紅である。

「皆刀さんですか?待ってましたよ、どうぞどうぞ」

「それでは、しつれいします」

そう言うと、スゥーと障子を開け、閉めた。

「遅くなってすみません」

「大丈夫ですよ、それで守備はどうですか?」

「上々です。局長も協力してくれるとおっしゃってました」

「そりゃそうですよ、土方さんのことなんですから♪」

何やら鬼の副長に気づかれないように何かを企んでいる沖田達であった。

「近藤さん・・・あんたまで何なんだ?」

 今日の近藤はちょっと変だった。(後の土方談

「いや、なんでもないさ。そうだ、歳」

 口元をニヤニヤさせながら「なんでもない」と、言われても信じられないのが土方である。

「・・・」

「そんな疑うような目で見ないでくれよ」

「・・・はぁ。で、何だ?」

 ため息をつきながらも話を聞く。

「今晩は空けとけよ。っと、これからちょっと用事があるから俺は出かける」

「はぁ?」

 言い終わった後の行動はすばやかった。
 土方が質問をする前に近藤はさっさと部屋を出て行ったのだ。

「・・・」

 一人部屋に残された土方は一人、またため息をついた。コトンと、土方の文机にお茶を置く皆刀。
 今は土方の小姓ではないのだが、いつの間にか皆刀の日課になっていた。

「お疲れですね、副長」

 疲れの原因を知っているからちょっと可愛そうにも思う皆刀である

「あぁ、朝から総司はニヤニヤしながら俺の後ろをついて歩くわ、近藤さんも変ににやついてるわで・・・そういや、お前」

 どうやら総司が先ほど言った言葉を思い出したらしい。


『別に、これといった目的は・・・まぁーあるといったらありますけど、まだ皆刀さんが来てないからやりません』

『まだ皆刀さんが来てないからやりません』


「お前、総司と何を企んでやがる?」

 沖田先生・・・ちょっと口滑りすぎですよ。

「さぁ?何のことだかわかりませんな」

 鬼の副長と対等に接する事が出来る数少ない隊士の一人である皆刀。そんな風に凄まれてもびくともしません。

「・・・」

「・・・」

 しばしのにらみ合い。
 先に沈黙を破ったのは、場外の人間だった。
 バァーンと、勢い欲障子を開け放ったのは、沖田だった。

「なぁ!?」

「土方さん!!屋根に来てください!!」

 有無も言わさずに土方の手を取り、走り出す沖田。

「ちょ、総司!!」

 いきなり障子を勢い欲開け放ち、ましてや、いきなり土方の手を取り屋根へと連れて行く、何もかもが予想外の事ばかりで当の本人は眉間に皺が出始めた。

「おぉ、歳。来たか」

 無理やり沖田に屋根に上らされた土方。眉間には皺が何本もあったとかなかったとか(後の沖田談

「何なんだい、これは?」

 屋根の上には近藤、山南がいた。二人の前には酒と何種類かのつまみがあった。

「やぁ、土方君」

 ヒラヒラと手を振る山南。

「・・・」

 眉間に皺が増える一方だ。

「今日が何の日か覚えてないんですか?」

 上がって来た沖田が言った。

「?」

 何の事だかさっぱりわからない土方。

「やっぱり覚えてないでしょ?」

 沖田の後ろから皆刀が上がって来た。

「何の事だ」

 一拍置いて、皆刀が言った。

「今日は貴方がこの世に生まれた日ですよ」

「!!」

「ほぉーら、やっぱり忘れてる」

 沖田がヘラヘラと笑う。

「歳は自分のことには疎いからな」

 近藤もつられて笑う。

「私は昨日、皆刀君と沖田君から聞かされたよ」

 山南は微笑む。
 当の本人は、顔を伏せる。
 あぁ言うのを赤鬼って言うんですかね?耳まで真っ赤になってましたよ(後の皆刀談
 その晩、5人は月を見ながら酒を飲んだらしい。




大人のようで子供なあの人