教室にて。


 一番後ろの席にいる男子が体調不良を訴えていたのは朝からだ。
 本当は、今日学校を休む気でいたが、先生からは今日はテストがあるから来いと言われて来た。と本人は言っていた。

「おい、大丈夫か?」

 先生が心配になって近づけば、その男子はムクリと起き上がった。

「うわぁーお前、耳が白いぞ」

 隣の席の男子がそういった。ここからでは見えないが、周りの反応を見ていると、顔色は青白く、首も白くなっているらしい。本人は、吐きそうだと言った。

「かーえれ!かーえれ!!」

 隣の陸自上がりの22歳の男子が子供のよう手をたたく。

「お前は子供か!!」

 周りからドッと笑いがおこる。

「学生ですから」

「いくら学生気分だからって、そんな行為は中学生か小学生だろ!」

 そんな先生と生徒の漫才をそ知らぬ振りしてさっさと渡されたプリントをやっている山南。前の席には土方が座っている。
 後ろを振り返り、山南のプリントを覗く。

「どこがわからないんですか?」

「いぃや、ここがちょっと・・・あぁーやぱりそれでいいのか」

 などと、勝手に覗いて勝手に解決してまた自分の机へにと戻る。

「まったく・・・私は答えですか?」

「いいじゃん、減るもんでもないし」

「そういう問題でもないんですが」

「気にしない気にしない。気にしたら負けだ」

「・・・」

 ズレた眼鏡をクイッと戻して残りの問題をやってしまおう。そう思った。



*****


昼休み。
4階 実習室前。


「何で私まで来なければならないんですか?」

 文庫本を片手に壁にもたれかかっていたのは、山南だった。

「いいじゃないか、減るも」

「私の読書時間が減ります」

「どうせ、帰りの電車内でも読んでんじゃねぇーかよ」

「それはそれです。それよりも早く終わらせなさい」

 土方はただいま簿記の追試中なのだ。
 昨日行われた簿記のテストで日付と金額をちょっと間違い、2枚のテスト中2枚とも追試という最悪な結果になってしまった。

「本当、あなたは詰めが甘い。あれほど確認をちゃんとしろと言ったのにろくに確認もしないでさっさと出すからこんな事になるんですよ」

「確認はちゃんとしたさ!・・・計算の」

 最後の方は小さい声で言った。

「そんな問題さっさと終わらせてください」

「へいへい」

 サラサラと問題を解いていく。
 土方は高校時代に選択教科で簿記を専攻し、級も持っている。そんな人がこんな単純なミスをするから取った級を返せと言いたくなる。

「「遅くなりました!」」

 扉を豪快に開けて入ってきたのは同じクラスの男子で土方と同じ簿記の追試メンバーだ。
 その中には、午前中に体調不良を訴えていた男子もいる。

「遅い!追試は1時10分からと言っただろう。それに、バスケをやってきて汗かいて時間に遅れてきてテストうけようなんて、何様のつもりだ」

「・・・」

「しぼられてんな・・・」

「18なんですから、決められた時間くらい守れないと社会には通用しませんよ」

「そりゃそうだけど」

「「すいませんでした!!」」

 遅れてきた男子二人が頭を下げていた。その中には午前中に体調不良を訴えていた男子が汗を流していた。どうみてもバスケをしている。

「それにお前、体調悪いんじゃなかったのか!?」

「いや、治りました!」

 どこの仮病だ。

「心配した俺が馬鹿みたいじゃないか」

「先生、終わりましたー」

 終わらせた2枚のプリントを提出し、採点してもらった。結果は、1枚50点満点で両方とも45点。合格点は両方共に40点。どうにかクリアーした。日付と合計は間違わなかったが、振り分けを逆にし、元丁番号を書き忘れていた。

「本当、詰めが甘いですね。だから彼女にも振られるんでしょう?」

 山南が採点されて戻ってきたプリントを見て言った言葉であった。



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