OA教室にて。



「あ、俺やっぱり受かるかも!」

 と、OAの授業中に叫んだのは、斜め前にいる男子だった。

「先生、俺やっぱり2級じゃなくて、1級にするわ」

 などと、なめたことを抜かす男子であった。

「本当、あいつって調子こきだな・・・そう思わねぇーか?山南さん」

 調子こきの男子の斜め後ろにいる土方が隣で黙々とエクセルをやっている山南に言った。
 キーボードを叩く度に長いしなやかな髪が絹糸のように揺れる。お互い、長い髪を後ろで結んでいる。
 山南は知らないだろうが、女子からは、山南くんのシャンプーは絶対オー〇リーよ!いや、あのしっとり感はRA〇ARSよ!いぃや!この前甘い・・・そう、ココナッツのような甘い匂いがしたは!あの匂いは絶対ラッ〇ュのよ!!などと、通販好きんの女子に言われているを山南は知らない。追加で、使っているシャンプーは・・・創造にお任せします。

「ま、言わせておけばいんじゃないですか?実際、彼は最近できるようになってきていることなんだし」

「そりゃ、そうだけどよ・・・」

 土方は面白くないのだ。
 最初は、ほとんどの生徒がパソコンがろく出来なかった。ローマ字打ちすら間々ならないメンバーの中で、土方はずば抜けて出来ていた。
それが、入学してみて早半年以上も過ぎてみれば、最初にやった電源を入れない地獄のブラック画面打ちのお陰でその生徒たちはメキメキと上達し、逆に癖がついていた土方は自己流のままでいったために、最近では他の生徒に速度で追い抜かれるという不名誉な結果だ。自業自得といえばそうだが、土方がこの男の事を言うのには、もう一つある。

「あぁー、やっぱり無理!!もぅやだぁー」

 調子こき男がまた叫んだ。
 制限時間内に通信文が出来なかったのだ。

「俺、やっぱり2級でいいわぁー」

 と、このとおり。
 土方は、この態度が嫌いだ。
 何事も直ぐ投げ出し、努力をしないで楽をする性格の奴等を、土方は毛嫌いしている。
自分は、今まで努力などをしてきてここまできたというのを、この男は、一回出来ただけで調子に乗り、次が出来なかったら、あきらめるとまるで努力をしようとはしない。
 今は、授業の一環と言う事でやっているが、こいつにこの級をとって来いとテキストを渡しても、何とかなるべと思ってろくに勉強もせずに試験に挑むタイプの人間であり、後々その行いが自分を不利な状況にするというのを分かっていない。その場面になってみないと分からない人間であると、土方は思っていた。

 ああいう奴は一回しめないとな・・・いや、しめても意味ないか・・・。

 などとも思っている。

「お、山南はできてんねぇー、今何問目?」

 調子こき男がそうそうにあきらめ、山南のディスプレを覗き込みに来た。

「後1問で終わります」

「さっすがは天才!俺とは違って早いねぇー、俺なんてまだ6問目よ!?」

「それは、君がやらずにサボっているからでは?」

「お前とは違って、俺はマイペースにやるの。それに、俺、馬鹿だし♪」

 ヘラヘラと笑って周囲を笑わしているが、山南は笑っていない。

「馬鹿だと自覚しているなら、何故やらない?」

「へ?」

「自分は”馬鹿”だと自覚しているなら何故その分勉強をしようと思わない?馬鹿だと分かっているなら何故自分から勉強をしない?」

「はぁ?」

 山南の態度に男が切れた。

「俺はな、あんたと頭の作りが違うの。あんたみたいな天才と一緒にしないでほしいね!そう思うだろ?土方」

 なぜそこで俺にふる!?などと思いながら土方は冷ややかな緯線を男に向けた。

「俺も山南さんに同感だな。人は誰しも一緒だ。まして中身は同じ構造の人間だ。その人間が頭の作りが違うどうこうで区別がつくんなら、その人は天才だから天才人間でお前は馬鹿だから馬鹿人間か?そんなのは聞いた事無いな。人とは、自分から努力しようとすればなんだって出来るんだ。体にハンディキャップがあろうとも人は努力を捨てない限りは、色々な事が出来る。お前は五体満足の体を親から貰ってるんだ、努力をしようと思ったら何だって出来るんだ、それをやらないで自ら逃げいているのは、とんだ腰抜けだな・・・いいや、弱虫か?弱者か?自分には無理だ、出来っこない・・・なんて一生思ってれば、お前には一生できないなんだよ・・・この馬鹿が」

「っつ!!!」

 ちょうどチャイムが鳴った。
 先生が恐る恐るといった風に今日の授業はここまで・・・日直さん、挨拶。と言った。

「・・・き、きりぃーつ・・・気をつけ・・・ありがとうございました」

 顔を真っ赤に染めた調子こき男が足早にOA室を後にした。
 その場に残った生徒たちは去っていく背中を見ていた。

「また、ずいぶんと言いましたね」

 ファイルにやっていたエクセルのデータを保存しながら山南が言った。

「いいんじゃね?どうせ後1年ちょっとだし」

「私は穏便に終わりたかったんですけどね・・・」

「あんたが言わない代わりに俺が”優しく”単刀直入に言ったんだ、それでいいだろ?」

「明日からどうするんですか?」

「どうもしない、普通にすればいい。今日の事がなかったかのように」

「私は、いつもと変わりませんけど」

「あんた、本当に可愛くないな・・・」

「男に可愛い言うあなたの神経が知りたい」

 最後にはいつもの会話をしながら、席を立った。

「・・・どうかしましたか?」

 生徒達の視線が山南達に集まる。

「いや、別に・・・」

 その場にいた男子がそう言い、もう一人の男子が

「土方って、案外言うんだな・・・」

 などといった。

「俺?まぁー・・・うざい奴にはなそれに、俺あぁいう性格嫌いだし。嫌いな奴は徹底的に潰すタイプだし」

「・・・」

「さて、皆さん、先生が教室で待っていますから行きましょうか」

 山南がサラッと土方の発言を流してささっとOA室から出て行こうとする。

「あ、山南さん待ってくれよ!」

「私が、あなたを待つ理由を聞かせてほしい」






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