雨が止んだ後の晴天は、清々しいが、季節が夏だと思えば逆に湿度が高くなり、じめじめ感が否めない。
そんな夏真っ盛りな江戸の町。奇士達も太陽からの陽射しには勝てない。
「あっついぃー」
そこら辺にあった物でとりあえず扇いでみたものの、涼しい風ではなく、熱が篭ったモワンとした生暖かい風がきた。
「風の循環が悪いですから、扇いだら逆に暑くなるだけですよ」
船着き場で足を浸しながら涼んでいた江戸元、宰蔵に現実を突き付けるアビ。
「うんな事言ったって、暑いもんは暑いんだよ!それにほれ、この子なんて干からびちゃって」
そう言って指差した方には暑さにやられてのびている宰蔵がいた。
「あつい…」
「さっきからこの言葉しか言ってないのよ」
「ははは…今日はいつにも増して暑いですね…」
アビもあまり意味がない手で扇いでみたが、ろくな風が来ない。
「そういや、お頭はどうしたんだい?往さんも居ないようだが」
「お頭は今裏にいます。往壓さんだったら…ほら、あそこに」
アビが差した方は屋根だった。
「あぁーら、一人だけ屋根に登ってら…あら、白雨も一緒かい?」
白雨とは、小笠原が拾ってきた白猫だ。猫が日向ぼっこのために屋根に居るのは普通だが、竜導と一緒に居るのが珍しい。
白雨は飼い主と奇士達にはなついているのだが、何故か竜導にはなついていない。なつかないと言うよりは、嫌っているに近い。
飼い主の小笠原も分からず仕舞い。何故、竜導を嫌っているかを知るのは白雨だけだ。
そんな関係の二人が一緒に屋根で日向ごっこをやっていること事態がありえない。
「ふぁ〜…あちぃー」
パタパタと着物の襟で扇いでみるが、変わらない。隣にいる猫はアクビを一つして涼しそうにしている。
「白雨さんよ、あんたは涼しそうで良いよなー」
「…」
素知らぬふりして前足で顔を拭く。
「…無視かよ」
おもしくねーなーとか愚痴ると、下から自分を呼ぶ声聞こえた。
「竜導!いるんだろ?」
小笠原だ。
その声に反応して、隣で素知らぬフリをしていた白雨がひょこりと立ち上がり、小笠原の声が聞こえた方へと行き、ひらりと降りた。
「わぁ!?…白雨か、竜導は上か?」
「にゃぁー」
「なんだい?小笠原さん」
屋根の上からひょっこりと顔を出す。
「やはりそこに居たか、竜導。ちょっと買い出しに行く、付き合え」
「俺が?」
「お前の他にそこに誰がいる」
「何で俺なんですか?宰蔵とかアビがいるじゃないか」
「だめだねー、往さん」
と、そこに江戸元が入ってきた。
「お頭は、あたしらじゃなくて、“往さんがいい”って言ってるんだよ」
「江戸元!!!」
江戸元の発言に慌てて否定をするが、否定している本人の顔が真っ赤なので、意味がない。
「…」
「っ!!こ、来ないなら別にいい!!代わりに違う者を連れていく!!」
顔を真っ赤にしながらさっさとその場から逃げる小笠原。足元には白雨がじゃれながら着いていく。
そんな小笠原の反応を見た竜導の顔はいたずらっ子のような笑みをしていた。
「誰が行かないなんて言った!ちょ!!待てよ!!小笠原さん!」
そんな二人を見て江戸元はクスクスと笑いながら見送っていた。

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