「白雨!」

 その日は、朝から白猫を探す小笠原の声が響いた。
 廊下を探し、縁側を見、庭を歩き、部屋を覗いたが、どこにも見当たらない。
 もしかしたら行き違いになったかもしれない。
 そう思いながら小笠原は縁側に腰をおろした。さすがにいっぺんに探し過ぎた。

「…」

 何も考えずにただぼうっと庭の木々を見ていた。
 庭には先日庭師を呼んで季節にあった木を植えてもらった。
 木の枝が風に合わせてなびき、木の葉が舞い上がる。秋分を過ぎると風が一段と冷たくなる。

 もうそろそろ火鉢を出すか。

 そんな他愛ない事を考えていると、どこからともなくにゃ〜と、暢気な鳴き声が聞こえた。

「白雨か?」

 どこから聞こえたか分からないので、取り敢えず庭に向かって呼んでみた。
 すると、庭に植えてある1本の木から、ガサガサと音が聞こえ、次には天辺の辺りから白雨の白い小柄な体がピヨンと、背中に羽が生えているかの如く降りてきた。

「にゃぁ〜」

 小笠原にここだよ的な感じに鳴く。前足で顔を拭く仕草がなんとも可愛らしい。
 拭き終わると、テコテコとマイペースに歩き、軽々と小笠原の隣に着地し、何事もなかったかのように小笠原の膝へと飛び乗り、寝始めた。

「…。」

 当然の如く自分の膝にいる愛猫を見て小笠原は、先程まで探していた自分が馬鹿のように思えて仕方がなかった。




「お頭ー!おか…し…ら…。」

 宰蔵が小笠原を探しに縁側に来ると、そこにはポカポカ陽気に当てられながら、膝に白雨を抱きながら柱にもたれて寝ている小笠原いた。
 よほど気持ち良いのか、起きる気配がない。

「…ぁ」

 そんな上司を見つけてしまった宰蔵。別に急ぎの用事でもなかったのでよかったが、こんな所で寝ていたら風邪をひいてしまう。
 いくら季節外れのポカポカ陽気だからと言って、風は秋風である。このまま縁側で寝ていたら風邪をひくのは目にみえている。けど、起こすのには気が引ける。

 はて、どうしよう…。

 宰蔵の悩みは付きない。





白雨‐悩み




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