「寒い 」 外に出て、竜導の最初の一言であった。 今年の雪は例年よりも積雪が多い。よって、例年よりも寒さが身に染みる年となった。 「にゃー」 白雨の鳴き声もどこと無く弱々しい、多分寒さのせいだろう。 「寒いのか?白雨」 屋敷の主人で白雨の飼い主である小笠原は布団から起き上がり、書物を読んでいた。 「にゃぁ〜ん」 飼い主の問い掛けに答えるように鳴く。 それを聞いた小笠原は仕方ないなと言って部屋の隅で丸く、小さくなっていた白雨を抱き上げ、座り直した。 そんな時。 「おー、猫はいいねーそう思わないか?宰蔵」 障子が開き、そこに立っていたのは竜導 往壓と宰蔵の二人だった。 「わざわざよく来たな、雪は結構積もってたか?」 側にいた家臣に声を掛け、温かいものを持ってこさせた。 「去年よりも多く積もってます。これだと春に採れる山菜はあまり期待出来そうにありませんね」 障子からうっすらと見える外の風景を見て溜め息をつく。 来る時も大粒の雪が降っていて大変だったのに・・・これからますます積もると思うと嫌になってくる。 そう思いながら宰蔵は温かいお茶を啜る。 「それより、大丈夫そうだな?起きて、猫まで抱いてると」 渡されたお茶を飲みながら指を指す。 「あぁ、昨日よりは大丈夫だ。すまんな、先日は」 すまなさそうにする。 先日はいろいろと失敗をしてしまったと思う小笠原。 「本当に驚きました。イキナリ倒れるから」 心配そうな表情をする、だが、どことなく安心した雰囲気もある。 「俺もびっくりしたよ、目の前で倒れたからな」 それは、先日と言っても、二日前の話しである。 「…ふぅ」 朝、小笠原は起きた早々に溜め息をした。 起きたはいいが、体が怠い、頭もどことなくぼーっとする。 風邪か?と、思いながらも速攻で自分の考えを否定した。 布団の上に寝ていた白雨がのそのそと、小笠原の顔を覗きにきた、白雨の朝の挨拶である。 小笠原はそれに白雨の頭を撫でて反応を返す。 白雨は気持ち良さそうに頭を左右に振る。 「ふぅ」 もう一回溜め息をついて身支度を始めた。 白雨はそんな飼い主を見ながら、考えぶかそうな顔をしていた……ように見えた。 蛮社改所に着いて早々、アビに言われた。 「大丈夫ですか?顔色が優れなさそうですが?」 …っう。 着いて早々とは…。 「大丈夫だ」 半ば切れ気味で言う。 その後も、元閥、宰蔵と、同じ風に「顔色が悪い」と言ってきた。 流石の小笠原もここまで立て続けに言われると、風邪でもひいたか?と、思わなくもない。 そんな考えを巡らせていると、顔が朝から全然見えなかった男がやって来た。 「小笠原さん、顔が悪そ……じゃねーや、顔色が悪そうだぜ?」 まさか…竜導にまで言われるとは。 小笠原 放三郎、一生の恥だ。それにしても、今頃出勤してくるとは、いい度胸だ。書き物をしていたのを一端止めた。 「お前、今何刻だと思っいるんだ?」 「もうそろそろ昼飯の時間だな」 いい加減、小笠原の堪忍袋の緒が切れた。 バン!!と机を叩き、勢いよく立ち上がり、竜導へ向かって歩き出した。 「お前という奴は!!私よりも一回りも二回りも年上のくせに、なんだ!そのていたらく!!宰蔵を見習え!宰蔵を」 人差し指をビシっと、竜導へ向ける。 向けられた本人はあまり気にもしない風だ。 それよりも、竜導は、自分と小笠原の顔の距離が、ものすごく近い事の方に気をとられていた。 「聞いているのか?竜導」 先程よりも何気なく呼吸が荒い。 目眩もしてきた。 「おい、本当に大丈夫か?呼吸が荒いぞ」 お前に言われなくてもわかっている!! と、言いたかったが、どうにも口が回らなくなってきた。 「おい、小笠原さん」 「大…じょ……ぶ」 大丈夫だ。 と、言いたかったが、どうやら限界がきたらしい。 竜導に凭れ掛かるように、小笠原の意識は途切れた。 風邪のひきはじめ-1 |