雲一つない空。
 どこまでも続いている蒼い空。
 何だか、飛べると思えるほど綺麗な空。
 この前の事件が嘘のように清々しい。




 西の者が起こそうとした徳川幕府への呪詛。
 その計画を未然に阻止したのが蛮社改所と南町奉行所の鳥居耀蔵だった。
 その事件から数日が過ぎた。
 民はそんな事があったのは知らず、いつもと変わらない生活を送っている。
 だが、その事件が終わっ後からこんな噂が流れるようになった。

「妖に困っている人がいれば、『奇士』という名の五人集がどこからか現れる」

 そんな噂があるらしい。

「奇士は、風のように現れ、妖を退治する…そして、五人共美男美女だと」

 時間が取れる時には、こうして元部下達の様子を見に来る小笠原。
 蛮社改所は、勘定奉行の跡部の手によって廃止された。
 そこには、政治家どもの欲が渦巻く、黒い黒い決心て光を浴びない部分がある。

「はぁ…美男美女ですか?それは勘違いもいいくらいの勘違いだ」

 腹を抱えて笑い出す。

 小笠原と竜導は、蛞蝓長屋を出、肩を並べて前島聖天へと足を進めていた。

「声が大きいぞ、竜導」

 だが、言っている本人も笑いを堪えていた。

「だって…ッヒ…だめだ!!笑いが止まらん!!」

 そう言い、また腹を抱えて笑う。

 美男美女の集まりだと専らの噂だが、実際は、上は39歳から下は14歳の年齢層で、奇士をまとめているのは20歳の若造、奇士の中には山の民、男装をしている女、女装をしている男、揚げ句の果てには元浮民までいる。随分と個性豊かな集まりである。
まぁ、それを知っているのはごく一部の人間だけなのであまり問題はない。

「しょうがない奴め」

 そんなこんなを言いながらも、表情は笑っていた。心の底から…ちゃんと。
 昔は、今のようは笑わなかった。
 家のため、蘭学のため、民のため…憎まれ役を買い、なにもかもを背をい込もうとしていた彼が、ここまで誰かに甘え、笑うようになったのは、他の誰でもない、奇士達のおかげだろう。本人は鈍感だから気づいてはいないだろうが。

「…けど、一つだけあっている事があるな」

 ニヤニヤしながら子供のような笑顔をする。
 こうゆう時の竜導は、何かよからぬ事を考えついている。

「…何なんだ?その「あっている」ってのは」

 何を考えているのかがわからないので、身構える。

「何なんだ…その身構えは…まぁ、いいや」

 小笠原が身構えたのに不振んがりながらも話しを続ける。

「それはなぁー」

 ずいっ!!と、小笠原に近付いた。
 身構えていた小笠原は、一歩後ろに下がろうとしたが、やはり年の功か竜導の方が上手だった。




 その頃、前島聖天では、アビ、江戸元、宰蔵、白雨の三人と一匹は昼食の準備をしていた。
 アビは火をつけ、宰蔵は肉を切り、江戸元は周りの片付けをしていた。
 白雨は一匹、前島聖天の屋根で飼い主が来るのを待っていた。

「お頭遅いなぁ」

 川の向こうを見ながら心配そうな目で見る宰蔵。

「大丈夫ですよ、竜導さんが付いてますから」

 そっちの方が心配だよ。
 そんな事を思っても口に出さない江戸元。宰蔵のためでもある。
 アビもわかっているので、言った本人も苦笑いな表情である。

「やはり…私も付いていけばよかった」

 後悔先に立たず。
 まさにその通りである。




 腰に手を回された。
 ぐい!と、小笠原の体を引き寄せ、顔と顔の距離が以上に近い。

「…っ!」

 あまりの近さに、小笠原は顔が赤らんできた。

「俺にとっちゃぁ美女はあんたって事さ」

 やられると思ったその時。

「にゃ!!」

 ザシュリ。と、竜導の右頬に鋭い爪が食い込み、そのまま下へと引っ掻いた。

「いだっ!!」

 あまりの痛さにしゃがみ込んでしまった。

「にゃ」

 いいきみだ。とでも言ってるような表情である。
 言われた(?)本人は引っ掻かれた頬に手をあて、痛い痛いと言っている。
 一人、唖然とその光景を見てい小笠原、何が何だかわからなうなってくる始末。

「このやろ!!なんでお前がここにいるんだ!!宰蔵と一緒じゃなかったのか!?」

 猫に吠えても返ってくるわけがありません。

「くっそー…いてぇー」

 いてぇーよぉー。
 と、泣く39歳。
 やはり、こいつは本当に39歳なのか?と思ってしまう20歳である。

「何で・・・白雨がここにいるんだ?」

 竜導を無視して白雨を抱き上げる。

「にゃぁー」

 と、しか泣かない。だって、猫だもん。

「・・・」

 半分呆れ顔をしながらも、猫だもんな。と、思い、あきらめた。

「行くぞ、竜導」

「酷でぇーよぉー、部下は顔から出血してるっていうのに」

 わざとらしく泣きまねをする。本当に39歳か?

「ふ、そんなもんで死ぬようなお前じゃないだろ?」

 呆れ顔ながらも、笑顔で振り返り、答える小笠原。

「!!」

 その笑顔があまりに可愛かった。

「・・・。」

 それを見れた竜導は、得した。と、思い、たまには白雨に感謝だな。とかも思った。

「そんな所で突っ立ってないで、行くぞ!」

「へいへい、今行きますよ、お頭」

「・・・お前に『お頭』と、呼ばれると・・・変な気分だ」

「それ・・・酷くないか?」



 今日も変わらぬ、江戸の町。 

                       奇士は今日も、町を行く。

 いつもと変わらぬ町の風景。     

                       妖探しで、町歩く。

 けど、どこか違うよ、風の色。    

                       救いを求める、人のため。

 今日も今日とで、風はふく。

                       異界を求める、人のため。

 昨日と違う、風がふく。 

                       奇士は今日も、妖退治。

 明日はどんな、風がふく? 

                       町の平和を、守るため。


 人の不安を無くす為。



 奇士は今日も、町歩く。





白雨‐今日もいぃ天気



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