「まさか、あんたの漢神から出たのがナックルだとは…想像もしなかったな」

 小笠原と二人で酒を酌み交わしながら思いだし笑いをする39歳。

「思い出し笑いをする奴はスケベらしいぞ」

 早くもほろ酔い気分の二十歳。やっぱり、酒には弱い。

「てっきり、刃物関係かと思っていた。」

「…フン!」

 小笠原 放三郎の『放』字は、妖夷を殴り倒す事。

「まぁ、あんたにゃー到底似合わないと思うぜ」

「あんたはやっぱり刀握ってる方が似合う」

 最後の方は小笠原の耳には聞こえていなかった。
 もう酔い潰れていた。

  ・ ・ ・ 。

「ハハハハ!!やっぱりあんたは最高だ!」

 一人で腹を抱えて笑い出す。

 笑われている当の本人は、むにゃむにゃと夢心地だ。
 小笠原の顔に手を添え、愛おしそうに顔の輪郭をなぞった。

「…うぅん…」

 もちょこかったのか、体を身じろぐ。

「…ふぅ」

「いい年こいたおやじが…まさか襲う……なんて事、しませんよね?」

「うわぁ?!」

 後ろからいきなり声を掛けられたので、危うく近くにあった徳利を倒すところだった。

「え、江戸元!?」

 声が裏返ってしまった。

「宰蔵がお頭が見当たらないと心配していてね。それに、往さんも見当たらなかったから…アビと話して、鷲が来たんだ。」

「それだけか?」

 探るような目で見る。余程さっき邪魔されたのを根に持っているらしい。

「他にもあるって言ったら?」

 面白がっている。
 絶対面白がっている。
 口元と目がニヤニヤしてやがる……年寄りを虐めて何が楽しいんだ。

「冗談ですよ。」

 冗談に聞こえねぇーんだよ、あんたのは。
 そんな事を心中で思いながらも、声には出さない。出した・・・何か・・・殺されそう。

「さ、戻りますか。往さん?」

「・・・へいへい。」

 そう返事をし、むにゃむにゃと寝ている小笠原を抱き上げ、江戸元と共に戻ったとさ。





放。