「宰蔵、お前はここに残れ」

 竜導が、社から出ていく宰蔵を止めて言った言葉だ。

「え?」

 その言に戸惑う。

「お前は小笠原様の傍にいろ」

 そう言い残し、竜導達は蛮社改所を出て行った。
 一人、蛮社改所に残された宰蔵。一緒にいる小笠原は先程から一言も発せず、ピクリとも動かない。
 そんな小笠原を横目に見ていた宰蔵はふと、動きを止めた。

「…」

 小笠原の背中は見るだけでももの悲しく見え…見ているこっちが泣きたくなってきた。

 ツゥー

 と、宰蔵の目からは一筋の涙が出ていた。
 何でか……抱きしめたくなってきた。

「…お頭」

 自分が呼ばれる声が聞こえた。
 何も返事が出なかった。
 振り向きもしなかった。
 今のこの顔・・・・を誰にも見せたくなかった。

「………お頭」

 数秒の間があった。


 フワァ


「!?」

 宰蔵が後ろから小笠原を抱きしめていた。

「……ぁ」

 宰蔵は何も言わないかわりに、強く抱きしめた。
 耐えていたものが……これを機に流れでてきた。

「……っく……うぅ」

 声を押し殺して泣いた。
 声を上げて泣いて欲しいと思った。
 けど、お頭はそんな事はしないとわかっていた・・・わかっていたけど、ちょっと心が寂しかった。






おもい。