井戸の水が酒に変わった事件から早二日。
 宰蔵、小笠原、アビの二日酔いも治り、いつもと変わらぬ日々を送っていた。
 そんな、月が綺麗な晩。竜導は一人、月を見ながら酒を飲んでいた。
 そこに、二人の男が来た。

「珍しいな、江戸元とあんたの組み合わせは」

 来たのは、江戸 元閥と小笠原 放三郎だった。


「いつもここで飲んでるの?」

 杯を口の運びながら、江戸元は、隣にいる小笠原を盗み見た。
 杯には、酒が入ったままだ。
 本人はずっと、月を見たままだ。

「まぁ、たまに来るな。月を見るならここが一番綺麗に見えるからな」

 そう言い、竜導は月を見上げた。江戸元も、それに釣られて月を見上げた。
 今日の月は満月だ。いつもよりも一層怪しく、奇麗に、何かを誘惑するように、光り輝いていた。
 月を見上げながら竜導は、小笠原を横目で見た。
 やはり、杯に入った酒は全然減っておらず、本人は先ほどからずっと月を見ているだけだった。
 こう見ると、二十歳だというのが実感できる顔つきに見える。
 横顔は、まだまだあどけなさが残っているように見えるからだ。

「さて、鷲はおいとましますかな」

 よっこいしょっと。と、年にも似合わない言を言いながら立ち上がる、小笠原も一緒に立ち上がったが。

「おっと、お頭はまだ飲んでなさい」

 そう言われた。

「いや、別に私は」

「いいから、いなさい」

 いつもよりも、強く言われ、小笠原は渋々、従った。
 江戸元がいなくなってから一刻※が経とうとしていた。
 どちらも黙ったまま。
 竜導は酒を飲み、小笠原は月を見。
 何も話はしないが、なんとなく・・・なんとなく。
 いつもと違う雰囲気が流れていた。




※一刻=864秒(14分24秒)にしてます。
多分、この時代だと、一刻=2時間ですね(オイオイ)一日=12刻ですから。
一刻=864秒(14分24秒)の時は、一日=48刻だったらしいですね・・・すげぇー。





月見酒。