空には雲が一面もない晴天だった。
 昨日まで雨が降り続け、どんよりと湿った空気が漂っていたが、今日は打って変わり、澄んだ空気だった。
 竜導 往厭は一人、川辺に座り、川の流れを見ていた。
 昨日から降っていた雨のおかげで川の水量は上がり、いつもよりも流れる速さが速かった。
 そんな川を四十になろうという年の男が一人で見ているのは・・・なんとも言えない状況である。
 ふと、竜導の方に向かって歩いて来る人影があった。
 背格好は竜導よりはちょっと華奢な体つきに見えるが、どこか普通の人とは違うような雰囲気がある。
 腰には刀を二本差している。
 髪は乱れもなくきちんと整えている。
 服装も竜導と違い、きちんとしていた。

 男の名は「小笠原 放三郎」

 蛮社改所の頭取を務める。
 竜導よりも一回りも二回りも年下の上司である。

「竜導!」

 あぁーやっぱり、いつものように眉間に皺を作って。
 まだまだ若いんだから、そんなに皺を作んなくてもいいのに。

 そんなことを思いながらも、小笠原の呼びかけには答えようとしない。
 それがますます小笠原の眉間に皺を増やすことだと知っていても。

 まぁー怒るところも可愛いんだけどね。

 そんなことを思いながらも、小笠原にどやされる竜導でった。





ゆく川の流れ。

















おまけ。

「竜導!!」

 皺がますます増える。

 あぁー可愛い顔が台無しだ。

「聞いているのか?竜導!!」

 すぐ近くで声が聞こえた。

 ぁ、もうそんなに近づいてたの?
 なら・・。


 ちゅ。


 「そんなに眉間に皺を寄せてると、後が残るぜ、放三郎」

 これは年上としての忠告。

「後、可愛い顔が台無しだ」

 こっちは・・・ね?

 竜導がその場を去った後には、一人尻餅をついている小笠原だけだった。