その日は晴天だった。
 朝は雲ひとつない空、空気は澄みきり、行き交う人々もどこかウキウキしているように見える。
 誰一人として雨など降るまいと思っていたが、世の中には『にわか雨』というものが存在する。
 案の定、急に雨が降ってきてしまった。

 小笠原 放三郎は用事があり、ちょうど出かけていた。
 もちろん傘など持っていない。
 案の定、『にわか雨』が降ってきてしまった。
 なんともタイミングがよすぎて泣きたいくらいである。
 仕方なくそこら辺の軒先で雨宿りをするはめになった。

 ふと、どこからか猫の鳴き声が聞こえてきた。
 小笠原はどこから聞こえて来るのかと探してみると、どうや奥の方から聞こえて来ていた。
 気になって家々の間を縫って行くと、何件めかの家の角にいた。
 小さく、まだ子猫で、白い、綺麗な毛色だった。

「にゃぁ」

小さい、可愛い顔で小笠原の顔を見て鳴く。
なんとも愛らしい猫である。

「・・・。」

 しばらくその猫を見、決断したのか、小笠原はその猫を抱き上げた。
 猫もイキナリ抱き上げられたので抵抗をしたが、少ししてから落ち着き、小笠原の顔を舐め、愛くるしい仕草をし始める。

「くすぐったい」

 小笠原も顔をほころばせ、猫の頭を撫でた。

 さて、抱き上げたのはいいが、どうするか。

 小笠原は猫の頭を撫でたまま考えていた。
 その間、雨はまだ止まず、小笠原は雨に濡れる様に立っていた。
 猫は、小笠原の手でじゃれ始めた。

「まぁ・・・いいか」

 決心したのか、小笠原は猫を抱え直した。
 今まで雨に濡れたいたのを全然気づかなかったらしく、頭の先から足の先までびしょ濡れだった。
 はぁーと、ため息をつき、雨が止むまでまた軒先で雨宿りをし始めた。
 その間、猫は小笠原の手でじゃれ続けている。
 雨宿りを始めて直ぐに雨は止んだ。
 風邪を引かないようにと、びしょ濡れになった羽織を脱ごうかとも考えたが、やめた。

 どうせ頭から雨を浴びたんだ、いまさらだ。

 そう思い、猫を抱きながら晴れ渡った空の下、歩き出した。

「そうだ、お前の名前を考えなければな」

 猫を見ながら考える。
 白、チビ、タマ・・・。
 古典的な名前しか浮かばない。

「・・・!」

 何か思いついたのか、小笠原は口元をほころばせる。

「『にわか雨』の時に拾ったから、『白雨』だ」

 一人納得し、白猫の白雨を高く抱き上げた。

「にゃぁ」

 白雨もその名が気に入ったのか、機嫌よく空に向かって鳴いた。

 その日の空は、朝よりも綺麗に透き通って見えた。





白雨-にわか雨と白猫。




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